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家庭連合解散決定は「恣意的」 国連勧告無視に警鐘 前EU信教の自由特使 ヤン・フィゲル氏(上)
東京地裁は3月、民法上の不法行為を根拠に世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に解散を命じる判断を下した。教団は即時抗告し、現在、東京高裁で審議されている。前欧州連合(EU)信教の自由特使のヤン・フィゲル元スロバキア副首相がこのほど、本紙のインタビューに応じ、決定の問題点や信教の自由の意義について語った。(聞き手=ワシントン山崎洋介) ――3月25日、東京地方裁判所が家庭連合に対して解散命令を下した。この決定について、どう思うか。 強い懸念を抱いている。今回の解散命令は憲法上の法的根拠を欠いているだけでなく、日本が締結する「市民的及び政治的権利に関する国際規約」にも明らかに違反しているからだ。 このような措置は、特定の少数宗教や信仰共同体に対する脅威となり得るものだ。ある少数派が不当な扱いを受ければ、他の少数派にもその脅威が及ぶからだ。 家庭連合に対する今回の決定は、虚偽の証拠や告発に基づくものであり、実質的根拠を欠いている。法律ではなく、政治的動機に駆られたものと言える。 ――今回の決定の何が特に問題だと考えるか。 東京地裁の決定は恣意(しい)的なものであり、明らかに違憲で違法性がある。複数の点で正当な手続きを欠いている。まず、この裁判の審理が非公開で行われていることだ。 また、宗教法人法81条は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」ときに政府は解散命令を請求できると定めている。東京地裁はこの条文を、40年にわたる元信者との32件におよぶ民事の不法行為を含める形で解釈を拡大した。文科省は解散請求のために法解釈を突然変更し、これを公共の福祉への重大な侵害と見なした。 家庭連合の信者が、布教行為や寄付の勧誘によって「社会的相当性や社会規範」に反したと判断されたが、これらの概念はあまりに曖昧で行政・司法の恣意的運用を招きやすい。 国連人権規約委員会は日本に対し、「公共の福祉」を根拠に信教の自由を制限する運用をやめるよう勧告している。国際人権規約の自由権規約第18条は公共の福祉を理由とした制限を認めていない。むしろ同委員会によれば、国家には、支配的な宗教団体から敵意を向けられるおそれのある宗教的少数派を保護する義務がある。 しかし日本はこれを無視し、プロテスタント牧師による強制改宗を容認した。家庭連合に対する多くの原告はディプログラミング(強制脱会プログラム)や隔離などの強制措置を受けていたことが分かっている。 また東京地裁は非科学的なマインドコントロール理論を採用し、仮定上の潜在的な被害者を想定して判断を下した。このことは、恣意的で偏向した判断が下された証拠といえる。正当な裁判所の判断は政治的圧力やメディアキャンペーンに左右されない。日本の民主主義の未来は、法の支配の透明性と説明責任のある運用と人間の尊厳の尊重、すべての人への公平な裁きの擁護によってのみ築かれる。 ――あなたは家庭連合解散運動は約50年前の日本共産党の行動に端を発したと指摘している。 日本共産党と家庭連合との対立の根幹にあるのが、マルクス主義無神論だ。この思想は、神への信仰を排除し、宗教を禁止しようとする過激な運動に転じることが多い。なぜなら、宗教は、信者を世俗的価値観への崇拝や権威主義的な国家権力から解放し、独立させるものだからだ。 私は人生の半分をチェコスロバキアの共産主義体制下で送ったが、私の叔父は全体主義の秘密警察によって殺害された。体制は旧来・新興を問わずあらゆる宗教を複数の強圧的手段で抑え込もうとしたが、最終的には敗北し、1989年に暴力を伴わずに崩壊した。スロバキアにおいて反体制・自由獲得運動の主な原動力となったのが、反体制派のキリスト教徒とカトリック教会であった。